テレビ観戦30年目にしてF1を見なくなった僕が2019年に再びF1を見たいと思う7つの理由

McLaren MP4/4

初めてテレビでF1を見たのは忘れもしない88年の日本グランプリ。アイルトン・セナがアラン・プロストとシケインで接触しながらも涙の初チャンピオンに輝いたあのレース。

実はF1にハマったのはそのレースではなく、次の年の開幕戦プラジルGP。見た目麗しいジョン・バーナードがデザインしたF189を駆るナイジェル・マンセルがストレートでマクラーレンのプロストとウィリアムズのパトレーゼを都合3回ぶち抜いて圧巻の優勝。途中、不具合の生じたセミオートマのハンドルを放り投げて交換する様は衝撃的だった。このレースを見た瞬間からティフォシとして生まれ変わり、セミオートマ偏愛が始まったと言っても過言ではない。

あれから30年、F1に感化された少年はレーシングカートを始め、幾度となくサーキットへと足を運び、夢にまで見たモンテカルロ、マカオ、インディアナポリスを訪れ、そして29年目にして初めて日本グランプリで本物のF1を体感する。

しかし、しかしである。初テレビ観戦から30年目となる2018年、突如として観戦を止めてしまった。確かにロードバイクを手に入れ、自転車ロードレースへ関心が移っていったとはいえ、どれだけ忙しくても録画で観戦していた僕があっさりと観戦を止めてしまった。

理由は簡単である。
端的に言えば、「面白くない」のである。

最近はトップ3と呼ばれる資金力豊かなチームしか勝てない構造となっている。予選結果を見れば、自ずと決勝のリザルトも想像がつく。仮にトップ3の車にアクシデントがあり、最後尾に落ちたとしても、終わってみたら表彰台ということはザラ。それだけ下位のチームとは戦闘力に差がある。さらにはマシンの信頼性が高くなり、最近の車は壊れにくい。その上、テレメトリーで常時監視されているから、何か不調があれば、ピットからの指示でペースを落としたり、セッティングを変えることでマシンを労わることが可能となった。つまり、レースの醍醐味である不確定要素が限りなくゼロに近づいている。

ミナルディのピエルルイジ・マルティニがフロントローを獲得したり、レイトンハウスのイヴァン・カペリが危うく優勝しそうになったり、最終ラップに優勝目前だったデイモン・ヒルのアロウズのサスペンションが壊れるようなドラマチックな出来事は今や過去の美しき思い出となってしまった。

本来なら喜ばしき技術革新がF1からスペクタクルを奪い、僕はそこにカタルシスを得ることが出来なくなった。そして、F1を見なくなった。

そんな僕が舌も乾かないうちにまたF1を見ようなんて考えている。それは大きな変革が訪れようとしているからだ。残念ながら、それは小手先の空力規定の変更でオーバーテイクを増やそうとするようなFIAやリバティメディアの努力によってもたらされたものではない。その多くはスポーツの世界において同時多発的に発生しつつある世代交代によるものであり、それ以外のものはF1に過去の熱量を取り戻そうとするHondaの執念によって起きているものである。

前置きが長くなってしまったが、僕が2019年に再びF1を見てみようと思う7つの理由を紐解いていく。



理由その1 フェラーリの英断

自称ティフォシたる僕が最も気になるのは若干21歳シャルル・ルクレールのフェラーリ入りだ。僕が30年間見続けた中でも、これほど若いドライバーが跳ね馬入りした記憶はない。この30年でフェラーリがその当時活きがいいドライバーを抜擢した例を見ても、アレジ27歳、バリチェロ28歳、アーバイン31歳、マッサ25歳である。ルクレールの若さは突出している。数年前にその才能を開花させ、フェラーリ入りの噂があったセルジオ・ペレスは優勝経験がないことでフェラーリに毛嫌いされたという話があった。ルクレールは表彰台にすら上がっていない。

ザウバーでの走りは印象的であったらしい。僕は2018年の後半から見ていないので、なんとも言えないが、個人的にはルーキーにしては速さもあるし、頑張ってるなという印象。でも、インパクトとしては数年前のペレスの方が上だ。アレジやシューマッハ、ベッテルらがデビュー当時に見せたパフォーマンスには程遠い。

ただ、2015年に2位となったマカオグランプリの走りは印象的だった。当時、17、18歳だったルクレールを見て将来が楽しみだと思った。僕の持論としてマカオで速い奴はどこでも速いというものがある。海側の超高速セクションに合わせて限りなくダウンフォースを削り落としたマシンを山側のテクニカルセクションでは腕と度胸でねじ伏せる。長いストレートが2本、3本と続く海側では目まぐるしく順位が入れ替わるスリップストリーム合戦を制する必要がある。それを避けるには誰よりも速く走り、ポール・トゥ・ウィンを飾るしかない。

では、ルクレールが2015年に表彰台に上がったレースで2年連続優勝を成し遂げたフェリックス・ローゼンクビストやマカオマイスターのエドアルド・モルタラの方が実力が上なのでは?という疑問が生じる。僕は彼らの実力は間違いないと思っている。ただ、彼らには少しばかりの運が足りなかった。F1トップチームの育成ドライバーではなかったのだ。2017、2018年にマカオウィナーとなったティクトゥムはレッドブルの育成ドライバーだ。しかも、若い。2020年以降もレッドブルがF1に関わり続けるなら、彼には輝かしい未来が待っている。フェルスタッペンの尻に火がつくのは間違いない。

さあ、この若き才能が重圧に押しつぶされるのか、それとも見事に跳ね馬を手なづけるのか、楽しみながら見てみたい。


理由その2 期待のルーキーたち

2019年はルーキー豊作の年と言ってよい。ここ最近は資金力のあるドライバーや育成ドライバーが優先されてF1デビューを飾ってきた印象が強い。今年のルーキーたちもほとんどが育成上がりだが、実力を伴ってシートを掴んだ奴らばかりだ。マクラーレンのランド・ノリス、ウィリアムズのジョージ・ラッセル、ザウバーのアントニオ・ジョビナッツィ、トロロッソのアレクサンダー・アルボンと強力なラインナップ。まあ、ジョビナッツィは出走経験があるが、初のフル参戦だから、ルーキーとしよう。

この中で僕が注目しているのはメルセデスの育成ドライバーであるジョージ・ラッセルだ。ノリスのような一発の速さやアルボンのようなキレた走りはないものの総合力では一歩前を行っていると思う。彼の特徴的な大きな瞳と理知的な顔は既に風格を漂わせている。2018シーズンの国際映像において、何度かメルセデスのピットでレースを見守る彼の顔が映し出されたが、彼のモニター眺める眼差しは真剣そのもの。自らをハミルトンやボッタスに投影し、今まさに自分が走っているかのような感覚で見ていたに違いない。あとはウィリアムズの戦闘力次第だが、チャンスを掴んで欲しい。世界に驚きを与えることができれば、数年後にはメルセデスのシートにオコンとともに迎えられるはずだ。

ノリスやアルボンにとっても素晴らしい環境でのデビューとなる。ただ、アルボンはティクトゥムにスーパーライセンスが発行されるまでの場つなぎ的な起用と見られ、期待以上のパフォーマンスを見せてクビアトを蹴落とさなければならない。数年後に彼らのうち何人が残っているのか、それは神のみぞ知る。若き才能の船出に幸運を祈る。


理由その3 日本一速い男、遂にF1へ!?

Hondaは小林可夢偉以来となる日本人ドライバーの誕生に躍起になっている。昨シーズンは松下、牧野、福住に対して手厚いバックアップを行なったものの誰ひとりスーパーライセンス発給を満たす条件をクリアすることができず、不発に終わった。

F1の舞台に日本人ドライバーが再び登場するのはまだまだ先なのか?次の有力候補は野田潤々?いや、既に日本人でスーパーライセンス発給の条件を満たす者がいる。そう、現日本一速い男、山本尚貴だ。昨年、スーパーフォーミュラーとスーパーGTのダブルタイトルを獲得。一気に35スーパーライセンスポイントを稼ぎ、条件を満たした。彼はHonda 系のドライバーだが、今までF1参戦には興味見せなかった。そんな彼がアブダビ自ら出向き、F1への関心をアピールし始めた。

過去に日本一速いと言われながらも、F1に届かなかったドライバーはたくさんいる。彼を第2の本山哲にはしたくない。本山はニッサンドライバーということもありF1のレールにすら乗れなかったが、山本は違う。もちろん日本で純粋培養されたドライバーがF1で活躍できるとは思わない。F1でいきなりヨーロッパの百戦錬磨のドライバーたちとやり合うのは分が悪い。しかも2020年 にトロロッソのシートを狙うなら、相手は前述のティクトゥムだ。それでも、松下信治を待つぐらいなら、山本尚貴にチャンスに与えて欲しいとHondaにはお願いしたい。


理由その4 レッドブルHondaとニューウェイの共演

F1がまだ華やかなりし頃、個性的なドライバーたちに負けず劣らず、際立った存在だったのは天才と呼ばれるデザイナーたちだった。ゴードン・マーレイ、ハーベイ・ポスルスウェイト、ジョン・バナード、パトリック・ヘッド、ロリー・バーン、そしてエイドリアン・ニューウェイ、彼らは革新的な発想と驚くべき進化をF1にもたらし続けた。F1が世界最高峰の威厳とエキサイトメントを維持できたのは彼らのおかげと言っても過言ではない。

時は経ち、F1マシンの設計も分業化が進み、デザイナーの個性がマシンに反映される時代は終わった。今、マシン設計に個人の思想を持ち込める稀有なデザイナーはニューウェイ1人ではないかと思う。その彼がHondaエンジンを積んだマシンを手がける。過去数年、辛酸を舐め続けた非力なルノーエンジンで勝利を挙げてきたレッドブル。パワーにおいてはメルセデス、フェラーリに近づきつつあると噂されるHondaエンジンとのマリアージュに期待せずにいられない。もし、今年フェラーリが不甲斐ないのであれば、レッドブルに宗旨替えすることも辞さない構えで見守りたい。


理由その5 ライコネンのザウバー移籍

彼はあっさりとした性格だと思っていたので、現役に拘らず、きっぱりと引退を選択するものだと想像していた。それがまさかのザウバー移籍。ライコネンとフェラーリの間でどんな話し合いが行われたのかは分からないが、デビューチームで現役を終えるという美談よりも、Bチームへの格下げ感の方が勝るのは否めない。でも、彼が走り続けてくれるのは正直嬉しい。

ここ数年は成績よりも歯に衣を着せぬチームラジオでの会話の方が話題となることが多かったので仕方がないといえばその通りである。今年、ザウバーで乗る車は恐らく昨年フェラーリで乗っていたマシンのアップデート版。勝手知ったる車でルクレールやベッテルに一泡吹かせることもあるのではないかと思うのは判官贔屓しすぎだろうか。いや、失うものがなくなった時ほど人は強くなるもの。結果が伴わなくとも、元気一杯の走りを見せて欲しい。


理由その6 クビサの復帰

今年はF1に懐かしい名前が帰ってくる。そう、ロバート・クビサが9年ぶりにウィリアムズのドライバーとしてF1に復帰する。2006年にBMWザウバーでF1デビューしたクビサは類稀な速さを見せ、参戦3年目にして初ポールと初優勝を記録。久々に素晴らしいドライバーが現れたと興奮したものだ。

東欧らしい陰鬱な風体は好きになれなかったが、2011年開幕前のラリーレースの事故で右手を切断する寸前の大ケガを負った際は、事故の内容こそ違うもののアレッサンドロ・ナニーニのことを思い出し、悲運を呪った。しかし、ナニー二だってヘリコプター事故で完全に切断した右手を縫合し、カテゴリーは違うもののツーリングカーで再びドライバーとして輝けたではないか、クビサだってF1には戻れなくても再びレーシングドライバーとして復帰できるはずだ、と考えていた。でも、まさかのF1復帰。これは諸手を挙げて喜ぶしかない。

チームメイトは僕の若手一押しジョージ・ラッセル。もしかしたら、このコンビは他のどのチームよりも楽しみな二人かもしれない。低迷しているウィリアムズに奇跡のような大抜擢を受けたクビサ。この御恩をフランク・ウィリアムズの目の黒いうちに返して欲しいと思う。そして、同じくレース中の事故で負った傷に苦しむロバート・ウィッケンズやビリー・モンガーたちに勇気を与えて欲しい。


理由その7 失われつつある伝統イベント

シルバーストーン、モンツァ、ホッケンハイム。いずれもF1グランプリには欠かせない名物コースである。しかし、毎年のようにコースの老朽化や資金難により開催が危ぶまれている。事実、ホッケンハイムでは2015年と2017年の開催はなかった。

これらのサーキットは安全面での必要性からコースレイアウトが変更されている箇所もあるが、F1の代名詞となるよう特徴的なコースである。シルバーストーンで言えば、コプスを抜け、マゴッツ、べケッツ、チャペルと続く高速S字を力学的エネルギーの法則を無視するが如く駆け抜けるF1マシンには感動すら覚える。このコーナーを1000分の1秒速く走るためにドライバーは全身全霊を、コンストラクターは全知全能のすべてをF1に捧げる。それらはスパのオー・ルージュからラディオン、ケメル・ストレートに至る光景やモンテカルロのローズヘアピンやトンネルからのヌーベルシケインと同じくF1にとっては欠かせないアイコンなのだ。

時代といえばそれまでだが、古き良きF1の象徴が失われつつあることはとても悲しく、いつ無くなってもおかしくないこれらのレースを目に焼き付けておきたい。


最後に

いつもチャラチャラした言葉でブログを書いてるのにF1のことになると何か熱くなっていつもとは違う感じの記事になってしまいました。でも、そうなるってことは、まだまだF1が好きなんだろうなって思います。これだけ熱く語っていても開幕戦のメルボルンは恐らく例年通りのパレードレース。レギュレーションが変わっても、ドライバーが変わっても、オーバーテイクは増えないだろうから、やっぱり今年も面白くなかったって、見なくなることも十分考えられるけど、せめてメルボルンの週末まではワクワクしておきたいなって思う2019年。


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